チオシリケート蛍光体の絶縁層付きシリコン基板上でのエレクトロルミネッセンス
我々は蛍光体を用いたシリコン基板上光源を実現するために、チオシリケート蛍光体の
発光特性の制御やシリコン基板上への直接成長について研究を行っています。
これまでに(Ba,Eu)2SiS4粉末について詳細に報告を行いましたが、それをシリコン基板上で
成長させようとすると異なる結晶構造を持つ(Ba,Eu)Si2S5蛍光体が形成されることが
明らかになりました。今回はその(Ba,Eu)Si2S5について粉末およびシリコン基板上試料の
結晶構造および発光特性を明らかにすると共に、それを用いた発光素子から電界励起による
発光(エレクトロルミネッセンス)を観測することに成功しました。
結晶構造
(Ba,Eu)Si2S5は結晶の空間群が明らかになっていない材料でしたが、粉末X線回折の
結果から空間群C2に属する結晶であることがわかりました。空間群がBaとEuの組成比によって
変化しないのは(Ba,Eu)2SiS4と異なる点として挙げられます。また、ラマン散乱および
赤外吸収スペクトルにより、結晶内にSi4S10^{4-}アニオン構造が含まれていることを
明らかにしました。
フォトルミネッセンス(PL)特性
粉末試料について内部量子効率を測定したところ、最適なEu2+濃度において52%となり
実用に供されている蛍光体に迫る値を得ることに成功しました。
発光ピーク波長は510 nmであるため、緑色蛍光体として照明やディスプレイへの応用も
期待できます。また、シリコン基板上に成長させた蛍光体からも粉末試料と同様の
発光スペクトルが得られています。
エレクトロルミネッセンス(EL)特性
下に示す無機EL*素子を作製することで
絶縁層付きのシリコン基板上でエレクトロルミネッセンスを実現しました。
絶縁層付きのシリコン基板を用いたことで、無機EL素子構造で重要な要素の
ひとつである絶縁性を向上させています。今後はさらに素子構造を改善していくことによって
低駆動電圧、高効率で発光する素子を目指します。
*無機EL
無機ELは発光ダイオードや有機ELとは異なるメカニズムで発光します。
駆動に高い電圧が必要ですが、絶縁体で構成されるコンデンサ型の素子のため消費電力は
発光ダイオード同様小さく、省電力発光素子として期待されています。また、
発光ダイオードでは得られない面発光が得られるのも特長です。