硫化物母体結晶の欠陥に起因する赤色蓄光

 昼間の太陽光エネルギーを材料自体に保持し、 夜間に表示や照明として使おうとする蓄光現象の 研究を行っています。通常の発光材料は、 紫外光の照射をやめると光らなくなってしまいますが、 蓄光材料は、紫外光のエネルギーをしばらく保持して 数分間は光り続けるものです。しかし、その エネルギー保持の機構は解明されておらず、 蓄光の強度と時間はまったく不足しています。 現在の蓄光材料としては、緑色のものが装飾用などきわめて限定的な 用途に用いられているのみです。
 本研究は、新しい赤色の硫化物蓄光材料の エネルギー保持の機構について議論するものです。 ナノ秒からミリ秒の時間領域で発光の時間減衰等を 詳細に調べました。ごくごくわずかに生じる 硫化物母体からの青色の発光成分が、 赤色の蓄光現象に大きな影響を与えていることを 明らかにしました。青色の発光成分の制御が 今後の課題のひとつといえます。