近赤外LEDランプをあてて赤く光る硫化物蛍光体

 がん細胞に発光色素を結合させて光る部位を探すなどの 細胞イメージングの技術が期待されています。 通常は光子エネルギーの大きな青色の光を あてて発光させますが、生体表面のみにしか青色は届きません。 一方近赤外光は、テレビのリモコンの光が手のひらを通過する ように、生体深くまで届きます。そこで、 光子エネルギーの小さな近赤外光で、 それよりも大きな赤色を発光させる 光刺激発光が注目されています。
 本研究は、赤色蓄光蛍光体CaS:Eu2+において、 940nm, 10mW cm-2 というふつうの小さな近赤外LEDランプの 光を照らすことで、650nm の赤色光刺激発光が生ずることを 議論したものです。塩素イオンを追加でごく少量添加することにより 光刺激発光が強くなることを見い出しました。赤色を生じさせる エネルギーは、暗闇で長い時間保持することができ、その 減衰の時定数は140分と見積もられました。 その機構の解明と強度の向上が今後の課題といえます。