新規ナノ蛍光体の創製

 半導体をナノメートルスケールの大きさに小さくすることにより、 内部の狭い領域に電子が閉じ込められ、表面の効果も強く効いてくるため、 新たな機能が発現することが期待されています。
 当研究室では、酸化物半導体(ZnO)に蛍光イオンを導入することにより、 これまでにない高効率の蛍光物質を作り出すことをめざして研究を行っています。 その結果、針状の酸化亜鉛結晶を成長させて、プラス3価のユーロピウム(Eu)イオンを 導入することに成功しました。
 酸化亜鉛(ZnO)は、化粧品にも使われており、安価で毒性のない有用な酸化物半導体です。 針の直径は100から500ナノメートル、長さは10マイクロメートル程度です。 酸化亜鉛はもともと青色で発光する材料で、これにEuを導入すると緑色が強い 白色発光(図上)になりますが、針状の酸化亜鉛結晶の中にEuを導入したところ、 赤色の蛍光発光(図下)を示しました。このEuイオンは3価で針状形状の表面付近に 存在していることがわかりました。また、酸化亜鉛が吸収した光のエネルギーが ユーロピウムイオンに移って赤く発光していることもわかりました。 現在このエネルギーの移動がスムーズでないため十分な発光効率が得られていません。 その移動の機構を明らかにし、イオンを内部に一様に導入する手法を開拓することにより、 新規高効率蛍光体を実現すべく研究を行っています。