ユーロピウムをドープした酸化亜鉛ナノ粒子からの赤色発光

 液相レーザーアブレーション法によって酸化亜鉛ナノ粒子に赤色蛍光イオンを 導入することに成功しました。溶液中に置いた原料に強いレーザー光を当てることによって ナノ粒子を作るこの方法は、手順が容易であるなどの利点がある一方、生成されるナノ粒子が 金属やその酸化物に限られるという問題点がありました。高効率で安定な新しい蛍光物質を 開拓するには、蛍光イオンを1%程度導入したり、その濃度を制御したり することが必要になってきます。液相レーザーアブレーション法ではそのような 高機能ナノ材料を作り出すことはこれまで実現していませんでした。本研究では、 溶液に界面活性剤をうまく入れておくことなどの工夫により、原料が高強度レーザーにより はぎとられてその後冷やされるときに、赤色蛍光イオンのユーロピウムを取り込みながら ナノ粒子を生成させることができました。
 青色の光を酸化亜鉛ナノ粒子に吸収させると、ユーロピウムにエネルギーが移動して 赤く発光しました。その発光波長は、酸化亜鉛ナノ粒子に取り込まれたことが原因で、 ユーロピウム原料の波長からは変化していることが明瞭に観測できました。 ユーロピウムをドープした酸化亜鉛ナノ粒子は、有機溶媒中から成長させる方法などにより 報告例がいくつかありますが、エネルギー移動や発光波長の変化などを はっきりと観測できたのははじめてのことです。